ストレスの原因は、仕事の忙しさ、上司との関係、厳しい納期、家庭内の問題など、私たちの周囲に数多く存在します。しかし、同じような状況に置かれても、強いストレスを感じる人もいれば、比較的落ち着いて対応できる人もいます。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
その答えを考えるうえで重要なのが、出来事そのものだけでなく、その出来事を自分がどう受け止め、どのような意味を与えているかという視点です。
論理情動行動療法(REBT)は、人の考え方、感情、行動の結びつきに注目し、ストレスを増幅させる思い込みを見直すことで、より柔軟な対応を身につけようとする心理療法です。仕事上の問題や人間関係の悩みを、単に我慢したり、無理に前向きに考えたりするのではなく、自分の思考の仕組みを理解して対処することを目指します。
なお、章題には「REST」とありますが、本文で中心となっている療法の英語名称は Rational Emotive Behavior Therapy、略称は REBT です。以下では、本文の論旨に沿ってREBTとして解説します。
ストレスマネジメントと職場カウンセリング.pdf
1. ストレスは出来事そのものから生まれるのか
同じ出来事でも、反応は人によって違う
たとえば、職場で上司から仕事の修正を求められたとします。
ある人は「指摘された部分を直せばよい」と考え、修正に取りかかります。別の人は「自分は能力がないと思われたに違いない」「失敗すれば評価が下がり、もう取り返しがつかない」と考え、強い不安に陥るかもしれません。
上司から修正を求められたという出来事は同じでも、その後に生まれる感情や行動には違いがあります。
もちろん、職場の状況がストレスに影響しないという意味ではありません。過剰な業務量、理不尽な扱い、ハラスメント、不安定な雇用などは、現実の問題として改善する必要があります。それでも、出来事への反応には、本人が抱いている信念や物事の捉え方が関わっています。
REBTは、この点に注目します。ストレスの原因を外部の出来事だけに求めるのではなく、出来事をどのように解釈し、どのような要求や判断を自分に課しているのかを調べるのです。
ストレスという言葉が指すもの
ストレスという言葉は、日常生活では幅広く使われます。忙しさや緊張を指すこともあれば、不安、怒り、疲労、身体的不調などをまとめて表現することもあります。
また、適度な緊張は、集中力を高めたり、仕事への意欲を引き出したりする場合があります。問題になるのは、負荷があることだけではなく、その負荷に対する反応が強くなりすぎ、生活や健康に悪影響を及ぼすことです。
REBTの特徴は、ストレスを感じること自体を否定しない点にあります。つらい出来事に悲しみや怒り、不安を覚えるのは自然なことです。しかし、その感情が「耐えられない」「人生はもう終わりだ」「自分には価値がない」という極端な判断と結びつくと、苦痛がさらに増幅する可能性があります。
ここで重要になるのは、感情をなくすことではありません。現実の困難を適切に評価しながら、必要以上に自分を追い詰めない考え方を身につけることです。
2. ストレスを増幅させる「非論理的信念」
「そうなってほしい」が「絶対にそうでなければならない」に変わる
REBTでは、ストレスを強める要因として、非論理的信念(irrational beliefs)を重視します。
非論理的信念とは、十分な根拠がないまま、物事を硬直的、絶対的に捉えてしまう考え方です。人間であれば誰でも、程度の差はあれ、こうした考えを持つことがあります。
たとえば、次のような信念です。
「私は必ず成功しなければならない」
「誰からも批判されてはならない」
「他人は私の期待どおりに行動するべきだ」
「自分が望んだとおりにならなければ、人生はひどいものになる」
これらに共通しているのは、願望や希望が絶対的な要求へと変わっていることです。
仕事で成功したいと願うことは、自然なことです。しかし、「成功したい」が「絶対に成功しなければならない」に変わると、失敗は単なる望ましくない結果ではなく、自分の存在を脅かす重大事として受け止められるようになります。
同じように、他人から評価されたいと思うことは自然ですが、「誰からも悪く思われてはならない」と考えれば、批判や意見の違いに過剰に反応しやすくなります。
問題は、望みを持つことではなく、その望みが絶対に満たされなければならないと考えることにあります。
「ひどいことだ」と「耐えられないことだ」は違う
ストレスを強める考え方には、出来事を必要以上に破局的に捉える傾向もあります。
たとえば、仕事で失敗したときに「困ったことになった」と考えるのと、「こんな失敗をしたら、すべてが終わりだ」と考えるのでは、その後の心理状態が異なります。
前者は、問題の重大さを認めながらも、対応の余地を残しています。後者は、出来事を取り返しのつかない破局として捉え、冷静な判断を難しくします。
REBTでは、こうした思考に加えて、「こんなことには耐えられない」という考え方や、一つの失敗を理由に自分全体を否定する考え方にも注目します。
たとえば、仕事でミスをしたことと、「自分は人間として価値がない」という判断は同じではありません。ミスは修正すべき行動上の問題ですが、それだけで人間全体の価値が決まるわけではないからです。
失敗を認めることと、自分を全面的に否定することは区別できます。この区別ができるようになると、失敗から学び、次の行動へ進みやすくなります。
自分にも他人にも、過剰な要求を課さない
非論理的信念は、自分自身に向けられるだけではありません。他人や社会に対しても、「こうあるべきだ」という強い要求として現れます。
職場であれば、「部下は私の指示を必ず理解するべきだ」「上司は私の努力を正当に評価しなければならない」「同僚は私の事情を察するべきだ」といった考え方です。
これらの期待には、もっともな部分もあります。職場で適切な指示や公正な評価が必要なのは当然です。しかし、他人が自分の期待どおりに動くことを絶対条件にしてしまうと、期待が満たされないたびに怒りや失望が膨らみます。
現実には、他人にも事情や限界があり、自分の希望どおりに動くとは限りません。その事実を認めることは、不当な扱いを受け入れることとは違います。
必要なのは、改善すべき問題については具体的に働きかけながら、「相手が必ず変わらなければ、自分は一切対処できない」という状態から抜け出すことです。
3. 出来事・信念・結果の関係を理解する
ABCモデルでストレスの仕組みを捉える
REBTの中心的な考え方を理解するうえで役立つのが、ABCモデルです。
A:出来事
上司から仕事の修正を求められた。
B:信念・解釈
「ミスをしてはいけない。失敗したら自分の能力がないと思われる」
C:結果
強い不安、自分への非難、修正作業への着手の遅れ。
Aは、ストレスのきっかけとなる出来事です。Bは、その出来事に対して抱く信念や評価です。Cは、そこから生まれる感情や行動などの結果を意味します。
一般には、嫌な出来事が起こったから、つらい感情が生じたと考えがちです。しかし、ABCモデルでは、AからCへ直接つながると単純化せず、その間にあるBに注目します。
同じ修正指示を受けても、「改善点がわかった。次に生かそう」と考える人と、「失敗した自分は無能だ」と考える人では、感情も行動も異なるでしょう。信念の違いが、反応の違いに関わっているのです。
出来事を変えられなくても、解釈は検討できる
仕事の締め切りを延ばせない、上司の性格をすぐに変えられない、失敗そのものをなかったことにはできない。現実には、自分の力だけでは変えられないことが数多くあります。
しかし、その出来事について自分がどのように考えているかは、検討することができます。
たとえば、「失敗してはならない」という考えを、「できる限り失敗を防ぎたい。もし失敗したら、原因を調べて修正しよう」と捉え直すことができます。
この変更は、仕事への責任感を捨てることではありません。むしろ、失敗を過度に恐れることで行動が止まってしまう状態から、問題解決へ向かう姿勢を取り戻すためのものです。
ただし、すべてのストレスが信念の問題で説明できるわけではありません。長時間労働や職場での暴力・ハラスメント、深刻な経済的不安などには、環境や制度への働きかけも必要です。ABCモデルは、現実の問題を本人の考え方だけに還元するためではなく、変えられる部分を見つけるために活用するのが適切です。
4. ストレスは身体にも影響する
心理的な緊張が身体反応につながる
ストレスは、気分の落ち込みや不安だけでなく、身体の反応にも関わります。
強い緊張が続くと、心拍数の増加、筋肉の緊張、睡眠の乱れ、胃腸の不調などが生じることがあります。こうした反応には、身体が危険や負荷に対応しようとする仕組みが関わっています。
REBTの説明では、出来事を危険、不当、耐え難いものとして評価することが、その後の心理的・生理的反応を強める場合があると考えます。本人がその評価を意識していない場合でも、慣れ親しんだ思考の癖が素早く働き、感情や行動に影響することがあります。
たとえば、会議で発言する前に心臓が速く打ったとします。その身体感覚を「緊張しているだけだ」と受け止めることもできますが、「心臓が速く打っている。失敗するに違いない。こんな状態では耐えられない」と考えると、不安がさらに強まりかねません。
身体の反応に対する解釈が、新たな不安を生み、それがさらに身体反応を強めるという循環が起こる場合もあります。
身体症状を、すべて心理的な原因に結びつけない
身体と心理が相互に影響し合うことは、ストレスを理解するうえで重要です。しかし、身体症状があるからといって、必ずしも非論理的信念が原因だとは限りません。
痛みや動悸、消化器症状などには、医学的な原因が存在することもあります。症状が強い場合や長く続く場合には、医療機関で適切な評価を受ける必要があります。
REBTの視点は、医学的な診断の代わりになるものではありません。身体的な要因を必要に応じて確認しながら、ストレスへの反応や思考の癖も併せて検討することが大切です。
5. 自分でも気づいていない思考の癖を見つける
すべての判断を意識しているわけではない
人間は、自分が何を考え、なぜそのように判断したのかを、いつも正確に把握しているわけではありません。
経験を重ねるうちに身についた判断の基準や、過去の経験から形成された思い込みは、意識する前に働くことがあります。何かを見聞きした瞬間に「危険だ」「嫌われたに違いない」「また失敗する」と判断するのも、その一例です。
たとえば、上司からの返事が短かっただけなのに、「怒っているに違いない」と感じる人がいるかもしれません。本人には、その判断をしたという意識があっても、なぜそう考えたのか、どの程度の根拠があるのかまでは検討していない場合があります。
こうした反応を理解するには、自分の感情や行動を振り返り、その直前に何を考えていたのかを確かめることが役立ちます。
思考の癖は、気づくことで見直せる
長年身についた考え方は、簡単には変わりません。頭では「失敗しても大丈夫」と理解していても、実際に失敗しそうになると、強い不安が自動的に湧き上がることがあります。
それでも、思考の癖を見つけ、根拠を確かめ、別の考え方を繰り返し練習することで、反応の仕方を変えていくことは可能です。
具体的には、ストレスを感じたときに、次のような点を振り返ります。
- 何が起こったのか。
- その出来事を、自分はどう解釈したのか。
- 「絶対にこうでなければならない」と考えていなかったか。
- 最悪の結果を、確実に起こることのように考えていなかったか。
- 別の、より現実的な見方はできないか。
これは、無理に前向きな考えを押しつけるための作業ではありません。自分の判断を一度立ち止まって確かめ、思考に振り回される度合いを減らすための作業です。
6. REBTによる治療――信念を見直し、感情と行動を変える
まず、本人が何に苦しんでいるのかを理解する
REBTによる支援では、最初に、本人がストレスを感じている具体的な出来事を明らかにします。そのうえで、出来事をどのように受け止めているのか、どのような信念や態度が苦痛に関わっているのかを探ります。
ここで大切なのは、支援者が最初から「考えすぎです」「そんなことは大した問題ではありません」と決めつけないことです。
本人にとって重大な出来事を軽く扱えば、苦しみを理解してもらえなかったと感じ、支援を受け入れにくくなる可能性があります。現実にどのような問題があるのかを理解し、苦痛が生じていることを認めたうえで、考え方を検討していきます。
たとえば、昇進の機会を逃すことを強く恐れている人がいたとします。その人にとって昇進が重要であることを認めたうえで、「昇進できないことは望ましくないが、それによって自分の人生のすべてが失われるのだろうか」と問いかけます。
このように、本人の希望を否定するのではなく、希望が絶対的な要求になっていないかを検討するのです。
非論理的信念に反論する
REBTでは、非論理的信念を明らかにしたあと、その信念に対して積極的に反論し、より柔軟で現実的な考え方を形成することを重視します。ABCモデルの発展形として、信念を検討する段階をD、より適応的な考え方や感情につながる段階をEとして説明することがあります。
反論の対象となるのは、たとえば次のような考え方です。
| ストレスを強める考え方 | 検討するための問い | より柔軟な考え方 |
|---|---|---|
| 絶対に成功しなければならない | 成功が望ましいことと、絶対条件であることは同じだろうか | 成功を目指すが、失敗した場合も学び、立て直すことはできる |
| こんなことには耐えられない | 本当に対処できないのか。それとも、非常につらいということなのか | つらい状況ではあるが、対処できる部分を探すことはできる |
| 失敗した自分には価値がない | 一つの失敗で、人間としての価値すべてが決まるのだろうか | 今回の行動には改善点があるが、それだけで自分全体が否定されるわけではない |
| 他人は自分を尊重しなければならない | 他人が必ず期待どおりに行動することは可能だろうか | 尊重を求めて働きかけることはできるが、相手の反応を完全には支配できない |
ここで目指すのは、失敗を肯定したり、嫌な出来事を無理に好きになったりすることではありません。望ましくないことを望ましくないと認めながらも、それを破局や絶対的な耐え難さとして扱わないようにすることです。
「自分はダメな人間だ」から「今回はうまく対処できなかった」へ
REBTでは、特定の行動や結果を理由に、自分の存在全体を否定する考え方も問題になります。
たとえば、仕事でミスをした人が「私は何をやってもダメだ」と考えると、失敗の原因を調べるよりも、自分を責めることに意識が向かいやすくなります。その結果、次の行動を起こす力が弱まることもあります。
これに対して、「今回は確認が不十分だった。次回はチェックの手順を変えよう」と考えれば、評価の対象を具体的な行動に絞ることができます。
これは、自分に甘くなるということではありません。責任を認めながら、改善可能な問題と自分全体の価値を区別するということです。
自分を全面的に否定する必要がなくなれば、失敗を隠したり、過度に恐れたりすることも減り、現実的な改善に取り組みやすくなります。
7. 考え方を変えるだけでなく、行動も変える
リラクセーションや自己教示を活用する
REBTでは、考え方を見直す認知的な方法だけでなく、感情や身体の反応、行動に働きかける技法も活用します。
たとえば、リラクセーションは、緊張した身体を落ち着かせるために用いられます。自己教示訓練では、ストレス状況で自分にかける言葉を意識し、より現実的な言葉へと置き換える練習を行います。
会議で発言することに強い不安がある人なら、「失敗したら終わりだ」と自分に言い聞かせる代わりに、「緊張していても、伝えたいことを一つずつ話せばよい」と考える練習ができます。
ただし、リラクセーションは、どのような問題にも単独で十分な効果をもたらすわけではありません。緊張のきっかけとなる考え方や行動の癖も関係しているなら、それらも併せて検討する必要があります。
イメージを使って、感情の変化を練習する
REBTでは、ストレスの強い状況を頭の中で想像し、そのときに生じる感情を見直す方法も用いられます。
たとえば、仕事で批判される場面を想像すると、強い恐怖や怒りが生まれる人がいるかもしれません。その場面を思い浮かべながら、自分の考え方を検討し、過剰な恐怖を、必要な改善点を認める不安や悔しさへと変えていく練習をします。
ここで目指すのは、何も感じなくなることではありません。適切な不安や悔しさは、準備や改善を促すことがあります。問題なのは、それらが自分を追い詰め、行動を妨げるほど強くなってしまうことです。
行動の練習を通じて、考え方を確かめる
考え方は、頭の中だけで検討していても、実際の状況で同じように働くとは限りません。そのため、REBTでは行動面への働きかけも重視します。
たとえば、人前で失敗することを極端に恐れている場合、本人の状態や状況に応じて、小さな発言から始めるなど、段階的に不安を伴う行動を練習する方法が考えられます。また、自己主張やコミュニケーションのスキルを学ぶことも、ストレスへの対処に役立ちます。
ただし、恐怖を克服するために、危険な環境やハラスメントのある職場に耐え続ける必要があるわけではありません。行動の練習は、安全性と本人の状況を十分に考慮して行うべきです。必要に応じて、環境を変えることや、周囲に支援を求めることも重要な選択肢です。
8. 職場のストレスマネジメントに生かす
ストレスの原因と、自分の反応を分けて考える
職場でストレスを感じたとき、問題をすべて自分の考え方のせいにする必要はありません。一方で、環境をすぐに変えられない場合でも、自分の反応を検討する余地はあります。
たとえば、納期が厳しい仕事を任されたときには、まず作業量、期限、必要な支援などを具体的に確認します。そのうえで、「絶対に一人で完璧に仕上げなければならない」「助けを求めたら無能だと思われる」といった考えが、自分を追い詰めていないかを振り返ります。
このように、現実の問題と、自分の中にある絶対的な要求を分けて考えると、必要な行動が見えやすくなります。上司に優先順位を相談する、同僚に協力を依頼する、作業を分割するなど、具体的な対処へつなげられるからです。
管理職や職場の支援者に求められる姿勢
REBTの考え方は、職場で相談を受ける管理職やカウンセラーにとっても示唆があります。
本人がストレスを感じているときに、すぐ「考え方を変えればよい」と伝えると、問題を個人の責任に押しつけているように受け取られるおそれがあります。まずは、本人が何に困っているのかを理解し、職場環境に改善すべき点がないかを確かめることが重要です。
そのうえで、本人が自分にどのような要求を課しているのか、失敗や他人の評価をどのように受け止めているのかを一緒に検討します。
支援の目的は、本人を職場に適応させることだけではありません。本人が必要な支援を求め、自分の限界を把握し、より現実的に問題へ対処できるようにすることです。職場側にも変えるべき問題があるなら、個人への支援と組織的な改善を並行して進める必要があります。
ストレスマネジメント研修への応用
REBTのABCモデルは、職場のストレスマネジメント研修にも応用できます。参加者が実際に経験したストレス場面を題材に、出来事、考え方、感情や行動を整理することで、自分の反応の仕組みを理解しやすくなります。
たとえば、「上司から厳しい指摘を受けた」という出来事を取り上げ、「自分はどのように考えたか」「その考えはどのような感情につながったか」「別の考え方や行動はあり得るか」を検討します。
重要なのは、全員に同じ考え方を押しつけないことです。ある人にとっては認知の見直しが役立ち、別の人にとっては業務量の調整や対人スキルの習得、医療的な支援が必要かもしれません。本人の状況に応じて、複数の方法を組み合わせることが望まれます。
9. ストレスをなくすのではなく、ストレスとの関係を変える
REBTが示す重要な視点は、ストレスへの対処を、嫌な出来事をすべて取り除くことだけに限定しないという点です。
人生や仕事には、努力しても思いどおりにならないことがあります。他人の評価を完全にコントロールすることも、失敗をすべて防ぐこともできません。それでも、出来事をどのように受け止めるか、どのような行動を選ぶかについては、検討できる部分があります。
「失敗してはならない」という考えを「失敗は避けたいが、起きたときには対応しよう」に変える。「他人は自分を必ず認めなければならない」という考えを「認められたいが、他人の評価だけで自分の価値が決まるわけではない」に変える。こうした変化は、現実を甘く見るためのものではありません。現実を受け止めながら、必要な行動を選びやすくするためのものです。
また、ストレスの強さを本人の思考だけで説明しようとしないことも大切です。身体の状態、過去の経験、職場の人間関係、仕事の量、社会的な支援など、さまざまな要因が関係しています。思考の見直しは、それらの要因への対処と組み合わせてこそ、適切に活用できます。
ストレスを感じる自分を責めるのではなく、何が起き、どのように受け止め、何ができるのかを一つずつ整理する。その積み重ねが、ストレスに振り回される状態から、ストレスを抱えながらも現実的に行動できる状態へと近づくための一歩になります。
